「契約」と【契約自由の原則】について:

「契約」とは?

例えば

ある物を売りたい【A】と、その物を買いたい【B】との間で、意思表示の合致があると、売主【A】は「物を引き渡す義務」と「代金を請求する権利」を、買主【B】は「代金を支払う義務」と「物の引き渡しを請求する権利」を取得します。

 

上の例ように、相対立する意思表示の合致によって、権利義務を発生させることを「契約」といいます。

【契約自由の原則】とは?

◆当事者間の「自由な意思に基づく」という意味で、「契約自由の原則」が存在します。次の4つの自由です。

「契約する・しないの自由」、「契約の相手方の自由」、「契約内容の自由」、「契約方法の自由」。 

 

そして【原則】、「契約」が「法律」に優先しますが、

(1)「強行法規」違反 (2)「公序良俗」違反は無効となります。 

 

(1)「強行法規」とは、

各種業法など、公的規制を及ぼす必要のあるもの:医師法、建設工事請負契約など。

弱者保護の施策を法律で定めるもの:労働法、借地借家法、消費者契約法など。

手続や権利内容がルール化されているもの:会社法、各種登記法、各種知的財産法など。

※【注意】「民法」の規定の多くは信義則に基づく【契約自由の原則】によって貫かれております(「任意規定」です)が、「保証契約」は書面でなければ無効(第446条第2項)や「賃貸借契約」に対する「借地借家法」等「強行規定」に反する場合は無効となります。

 

また、 親族編・相続編」の多くは「強行規定」です。しかしながら、「指定相続」(「遺言」)が「法定相続」に優先する等民法は「強行規定」「任意規定」が「入れ子」状になっている部分がありますので【注意】を要します。

(また、「指定相続」も「強行規定」である「遺留分」を排除できませんが、相続人全員(遺留分を侵害されている相続人を含む)の合意があれば、「指定相続」どおりの遺産分割が実現できます。民法は【私的自治の原則(契約自由の原則)】を基本原理としています。

 

 このように、必ずしも「条文規定」のみによって、事理の是非を決することができないケース、判例判断に拠らなければならないケース、また慣習や暗黙のルールが優先される場合もあります。 →この関係性については、次のサイトをご覧ください。
   

        契約の結び方「具体論」 契約上の「基礎」について

 

したがいまして、それぞれの領域における「実務の現場の実態」に即して思考する「法に関する専門家(*)にご相談することが必要・不可欠となります。

(*)「法律の専門家」ではなく、法律をも包含した「法」の専門家です。∵何故ならば、人(法人)は法律のみに基づいて生活(事業)しているわけではないからです。(もちろん法律は、絶対多数の人々に遵守され(るべきものであり)ますが、一方本来、行動を突き動かす源泉とはなり得ないものだからです。】 

 

(2)「公序良俗」違反とは、

公の秩序(国家社会の一般的利益)や善良の風俗(社会の一般的な道徳観念)で社会の一般的秩序を維持するために要請される倫理的規範。

(例示)

殺人契約、人身売買契約、愛人契約、男女差別や常識を逸脱する長い試用期間の雇用契約、暴利な契約(高すぎる利子・違約金を定めた契約)など。

個別具体的に当該行為を制限する法令がなくとも一般的に「公序良俗」違反は無効とされます。

「契約書」の意義:

日本の法律では、【原則】当事者の合意だけで「契約」は有効に成立します。口頭でもメールでも構いません。(ただし、「保証契約」など一部の例外はあります。

 

しかし、口頭やメールのやりとりの中では、何が合意されているかが、明確に判別できない場合が多いでしょう。

 

したがって、合意の内容を明確にして書面化しておきましょうと作成されるのが「契約書」であり、「当事者同士の合意内容の証拠」という効果を有するものが「契約書」の本来の意義です。

 

付随的な意義として、「契約書」として作成していくプロセスの中で、「合意内容を話し合い、相互の意思を明確にしていく」こと。

 

また、昨今においては販売業や金融業、IT(ネットワーク)サービスのように多数の相手(消費者)と契約締結する場合には、「手続を定型化・迅速化させる」(既定の規約としておき同意を求め、クリック等で発注や同意したとみなす)こと等。以上が大きな意義といえます。  
 「事業者間の契約書の意義」もご参照ください。

「契約」のクーリング・オフについて:

◆一定の取引では、「クーリング・オフ」(「契約」の成立後、一定期間の間は、消費者側から「契約」を解除できることを法律がみとめる)制度があります。クーリング・オフのできるおもな取引は以下のとおりです。 

クーリング・オフできる取引 解除期間
訪問販売 契約書面を受け取った日から8日間
電話勧誘取引 契約書面を受け取った日から8日間
マルチ商法  クーリング・オフ制度告知の日から20日間
現物まがい商法  契約書面を受け取った日から14日間
 海外先物取引  海外先物契約締結の翌日から14日間
 宅地建物取引  クーリング・オフ制度告知の日から8日間
 ゴルフ会員権取引  契約書面を受け取った日から8日間
 投資顧問契約  契約書面を受け取った日から10日間
保険契約 契約書面を受け取った日から8日間

※期間は契約日を含む。ただし、海外先物取引は契約日の翌日から起算。

『消費者契約法・特定商取引法・割賦販売法のしくみ』(藤田裕 著:三修社)p19より引用。なお、上記は【原則】であり、例外(クーリング・オフが認められない場合)もあります。詳しくはお問合せください。なお、通信販売には認められていません。

※各都道府県(区市町村)に設置されている「消費生活センター」、「国民生活センター」 各地の「法テラス」などが苦情相談を受け付けています。

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